よ く あ る 質 問 と 回 答

 カウンセリングとはどのようなものですか?
 当相談室で行っているカウンセリングは、まず何よりも来談者が主体的に自己の内的問題に取り組んでいくことを重視しています。
 人は何らかの困難や課題に直面した時、解決法を模索します。課題の内容によっては、その領域の本を読んで知識を増やしたり、経験豊富な先達や専門家に相談して、適切な助言を与えてもらうことで課題をクリアすることもできるでしょう。しかし、心の不調や適応困難、意欲の低下などの背景には、その人固有の内的課題や未解決の心の葛藤が潜んでいることが多いのです。従ってカウンセリングでは、それらの課題や葛藤をできるだけ深く、正確に理解することによって、それまで自らの意思の統制外にあった問題に適切に対処していけるようになることを目指します。

 自分の内的課題に取り組むことが重要ならば、人の力を借りたりせず、自分自身で解決したいと思います。なぜ、カウンセラーの援助が必要なのでしょうか?
 勿論、独力で取り組まれ、十分な解決に至ることもあると思います。しかし、自己の内面を見つめ、内的課題に取り組むことは結構辛く大変な作業です。自己分析でかなりのところまで進んで行かれる人もいますが、よほど卓越した内省力の持ち主でも、どうしても限界にぶち当たります。誰でも自分の心の中にあるネガティブな側面には目を背けたくなるのが人情でしょう。また、ちょうど視野の盲点のように、自分自身には見えにくいスポットがあるものです。そういったある意味で自分の恥部とも言える領域、あるいは心の奥底に横たわる闇の部分に光を当て、見つめていく作業は、大変辛く苦しいものですが、カウンセラーという「伴走者」がいてくれると、大分心持ちが違ってきます。前に進んでいく勇気と安心感をもてるようになります。また、自分のポジティブな側面やよい方向への変化・成長といったものになかなか気づきにくい人もいるでしょう。カウンセラーは、いわば「鏡」のようにそれらを照らし出してくれる存在でもあるのです。

 精神的不調で苦しんでいます。その場合、精神科や神経科、心療内科といった病院を受診し、薬で状態を改善できればと考えるのですが、カウンセリングも受けた方がよいのでしょうか?
 精神科・神経科領域の薬物療法は着実に進歩を遂げており、また従来よりもこれら診療科の敷居が低くなってきたこともあり、多くの方々が受診され、服薬を通じてより快適な生活を営める時代となりました。不安や焦燥感、その他様々な気分・感情の状態は、脳内の神経伝達物質の働きが関与するものと考えられていますので、薬物の生化学的作用により変えられる部分は確かにあると思います。しかし、お薬によってなかなか状態が変わらない問題もありますし、薬物療法単独では効果が不十分であるが、心理療法(カウンセリング)を併用することで、より確実な改善がもたらされることもあります。近年、精神・神経科クリニックの受診者数が増大しており、精神科医による診療は、一人の患者さんにつき5分から10分程度といったところがほとんどです。ドクターがもっと時間を割いて話を聞いて下さればよいのでしょうが、なかなかそれも難しい実情の中で、1回50分の時間をかけてじっくりと来談者の話に耳を傾け、一緒に問題を考えていくカウンセラーの役割は決して小さくないものと考えています。なお当相談室では、精神科医による診察や薬物療法が必要と思われる方に対しては、適切な医療機関をご紹介しております。

 対人関係で色々と問題を抱えています。自分の性格を変えたいのですが、性格は変わるものでしょうか?
 個人の性格というものは、例えば30歳の人では30年間という長い歳月を費やして少しずつ形成されてきたものですから、性格を根本から変えるということはたやすくできることではありません。しかし、物事のとらえ方や対人場面での行動パターンといった、より意識レベルに近いものは、ある程度変えていくことが可能です。それが可能となる前提条件として、その人に「心のゆとり」が生まれることがとても重要となってきます。そして「心のゆとり」が生まれるためには、自分のことをつい否定的にとらえてしまいがちな傾向を変え、自己評価を向上させることが鍵となります。自分自身に肯定的なまなざしが向けられ自己受容が進むために、カウンセリングが貢献できる部分は大きいと考えています。

 カウンセリングはどのくらいの期間受ければ十分な効果が期待できるのでしょうか?また、頻度はどの程度が適当でしょうか?
 カウンセリングでは、時間の経過に伴う心の様態の変化に注目します。前回セッションで話された内容、そこで生じた感情などが、その後のインターバルでの行動や気持ちに影響を及ぼします。そして、それを次回のセッションでカウンセラーとともに考えていくことで、セッションをまたがってのつながりが生じ、そのような積み重ねを通じて、より深い内省が可能となるのです。セッション間の間隔があきすぎると、いつまでたっても表面的なところしか扱われないままとなりがちです。従って、できれば週1回、条件が許せば週2回くらいの頻度で受けることをお勧めします。しかし種々の条件でそれが難しい場合は、2週間に1回程度でも、ある程度の効果は期待できます。そして、それなりの変化・成長が認められ安定してきた段階では、月1回程度の経過観察的なカウンセリングをしばらく続け、終結を目指す場合もあります。
 終結までの期間としては、その方が改善を望む問題やその背景に存在する様々な条件(その人自身の心の健康さやその人を取り巻く環境の柔軟さなど)によって変わってきますので、一概には言えません。ただ、2・3ヶ月で目に見えた改善を期待されているとしたら、期待はずれに終わることが多いと思います。少なくとも半年程度、通常は一年から数年の歳月をかけて徐々に効果が現れてくるものとお考え下さい。しかもその変化の生じ方は、決して右肩上がりの一様なものではなく、三歩進んでは二歩下がるような遅々とした歩みであることが多いものです。また、あたかも螺旋階段のごとく、前に進んだように思ったけれども、また同じところに戻ってきたりもします。しかし長い目で振り返ると、少しずつ上に向かっている、確実に前とは世界の見え方が違ってきていると実感できるような変容が、カウンセリングによって生じるものと考えています。

 カウンセリングの効果に疑問を感じた時にはやめてもよいのでしょうか?
 勿論です。カウンセリングを始めるのも終えるのも、決定するのはあなた自身です。ただ、カウンセリングに対する疑問を抱いたり、カウンセラーへの何らかの不満を覚えた時には、そのこと自体をカウンセリングの場でお話し頂くとよいと思います。カウンセリングを続けていくと、その人固有の対人関係のパターンや特徴がカウンセラーとの関係の中でも再現されることがあります。そんな中で生じたカウンセラーへの苛立ちや不満などは、自分の内的な問題を考えていく上でとても重要なヒントを与えてくれるものでもあるのです。従って、疑問や不満を感じた場合は、黙ってその場を立ち去るというのではなく、カウンセリングの中でその思いを伝えてみて下さい。少し勇気が要るかもしれませんが、カウンセラーは来談者の怒りや不満に対し、真摯に向き合って受けとめていくトレーニングを積んでいますので、安心して表現してみて下さい。その上でやはり疑問や不信感が残るようでしたら、カウンセリングを終了するとよいでしょう。今は医療の分野でも患者が医師や医療機関を選択する時代ですし、カウンセリングにおいてもカウンセラーとの相性が合わない、どうしても心を開いて話せないという思いがぬぐえない場合は、無理に続けていく必要はないと思います。そのような場合は、他のカウンセラーを紹介してもらうとよいかもしれません。また、スタート時点でカウンセリングや担当カウンセラーに対する信頼感が今一つ持ちにくい場合は、とりあえず5回程度行ってみて、その後も続けていくか否かをカウンセラーとともに話し合うといった進め方もあります。日本人は相手に対する要求や否定的な印象を表現するのが難しい国民性をもっていると言われますが、お金を払ってサービスを受けるわけですから、カウンセリング場面では正当な権利として表現することをお勧めします。


 1回1時間弱で五千円の料金は高いように思います。健康保険などは使えないのでしょうか?
 残念ながら、当相談室でのカウンセリングは健康保険の適用にはなりません。カウンセリングの料金は、現在のところ統一した基準がなく、相談機関によってまちまちです。民間のカウンセリングルームの標準的料金も、大都市圏では一回一万円程度かかりますので、地域による違いもあります。
 一回五千円、週一回受けるとして月に2万円のお金が消えていくと考えると、確かに相当な出費となってきます。しかしお子さんの、あるいはご自身の様々な習い事にこのくらいのお金を使っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。私は人生の一時期に、自分の心の成長のためにお金を使うこと、自分に投資することは決して無駄なことではないと考えています。
 杜藏心理相談室では、一回50分五千円を基準額としていますが、相談に来られる方の種々の状況をお聞きした上で、ある程度弾力性を持たせた料金設定を行っておりますので、個々の事情も含めてお気軽にご相談下さい。
 また、当相談室は下記のEAP(Employee Assistance Proglam:従業員援助プログラム)会社と提携し、業務委託を受けております。お勤めの企業・団体等が下記のいずれかの会社とEAP契約を結んでいる場合は、このプログラムを利用することで、年に数回(多くは1年に5回程度)無料で当相談室のカウンセリングを受けることが可能です。企業などにお勤めの方(及びそのご家族)に限定されますが、このような制度の適用を受けて、まずは数回のカウンセリングを受けてみて、効果が期待できるようであれば継続して通う覚悟を決めるというように、所属する企業等のEAP制度を上手に活用する方法もあります。

*提携EAP会社
フィスメック(日本におけるEAPの老舗)
・ジャパンEAPシステムズ
・KHC(弘冨会・神田東クリニック)
・損保ジャパンヘルスケアサービス
・TMS(東京海上日動)

 子どもの問題で困っているのですが、本人は相談室に行こうとしません。どうすればよいでしょうか?
 お子さんの問題で日々頭を悩ませておられる親御さんで、できれば本人に相談機関に行ってほしいけれども、本人は引きこもって家の中から出られないとか、特に現状を変えたいと思っていないといったことがあると思います。そのような時は、まず親御さんだけでも相談に来られるようお勧めいたします。家族の中の誰かが心の問題を抱えて不適応状態に陥った時、その人を支える他の家族にも相当なストレスがかかるものです。支える側がストレスに押しつぶされたり、燃え尽きて心のゆとりを失ってしまった状態では、本人の変化・成長も思うように進みません。そのような場合は、まず親御さんだけでも相談室を訪ねてみるとよいでしょう。親がカウンセリングを受け、カウンセラーとともに、お子さんの様々な言動の背後に潜む彼らの「内なる声」をより正確に理解するようになれば、それまでよりもゆとりを持って適切に対応することができるようになると思います。親の態度変化を子どもは敏感に感じるものです。中には親が通っている相談機関に子どもが関心を抱き始め、「自分も行ってみようかな」などと話し始めることもあります。ご両親そろって相談に来られるのもよいことですし、当相談室では家族全員を対象とした家族合同面接も用意しており、様々な形態の家族支援を提供しています。

 杜藏心理相談室ではメールや電話での相談は行っていないのでしょうか?
 残念ながら行っておりません。理由は、直接お会いしてお話をうかがう形でのカウンセリングに専念したいと考えているからです。メールや電話を使った相談形態を否定するものではありません。具体的な知識や情報の伝達にはメールはとても便利なツールとなりますし、「いのちの電話」などに代表される電話相談活動の意義も大きいと考えています。しかし、一人の人間、あるいは一つの家族が抱える固有の内的課題にともに取り組んでいくカウンセリングのあり方として、当相談室では直接対面し、心的エネルギーのやりとり(情緒的相互交流)を最大限重視した形態をとりたいと考えています。従って、情報の量や方向性において制約が生じやすいメールや電話での相談は採用しておりませんので、ご了承下さい。

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